これはよくある相談なのですが、『将来の相続が気になるが、夫が遺言書を書いてくれない』『なかなか遺言書を書いてほしいと言い出せない』といったことがあります。
今でこそ、遺言書は相続対策として有効である、といったことがだいぶ世の中に認知されてきています。
しかし、まだまだ『縁起が悪い』『不謹慎』『うちは遺言書なんてなくても大丈夫』という考えの方も多いのが現実です。
そこで、できるだけ機嫌を損ねないように遺言書を書いてもらうための方法を考えてみましょう。
まずは自らが実践してみる
パートナーに遺言書を書いてもらうために、まずは自分の遺言書を作成してみる、というのも一つの方法です。
さすがに自分のパートナーが遺言書を作ったと分かれば、それにまったく無関心というわけにはいかなくなるでしょう。
ちょっと自分も遺言書を書いてみようか、と重い腰を上げてくれるかもしれません。
また、夫婦のどちらが先に亡くなるのかは分かりませんから、単にパートナーにその気になってもらうだけでなく、夫婦がそれぞれ遺言書を作ることは、将来の相続対策としても有効なことなのです。
一緒に作ろうと誘ってみる
多少なりとも相続というものに関心がありながらも、なかなか実行してくれないような場合には、自分と一緒に遺言書を作成しようと誘ってみるのも一つの手段です。
これも自分が先に遺言書を作成するのと同様に、将来、夫婦のどちらが先に亡くなるかは分かりませんので、相続対策としては理想的だと思います。
また、市販されているエンディングノートの中には、自分史といったものを記録しておけるものもあります。
こうしたものを利用してコミュニケーションをとりながら、昔の懐かしい思い出などを夫婦で共有するといったことも効果的かと思います。
遺産相続や終活の話題から話を広げてみる
最近では、新聞やテレビ、雑誌などでも相続や遺言書に関する話題が盛んに取り上げられています。
そうした話題をきっかけに、パートナーにも相続というものに関心をもってもらうよう話を向けるのもいいでしょう。
『自分には相続争いになるほど資産はないから』『家族はみんな仲が良いから大丈夫』という楽観的な考えから何の準備もせず、いざ相続となって思わぬところから争いの火種が生じる、という例を、私は仕事柄、何度も見てきています。
実際、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割調停の約7割は、遺産の総額が5,000万円以下という、いわゆる『普通の家』の相続案件です。
5,000万円というと、かなり多額なようにも思えますが、相続財産には預貯金などの現金だけでなく、自宅などの土地建物といった不動産も含まれますので、これは決して多い額ではありません。
資産の多い少ないに関係なく、円満に相続を進めるための手段として、遺言書を作成しておくというのは、とても有効な方法です。
遺言書というのは、作ろうと思ったときがベストのタイミングです。
まだ相続についての話をしたことがないという方は、ぜひ将来の相続、遺言書というものについて、夫婦で話し合うような機会を作ってみましょう。