遺産の中に不動産がある場合、相続手続きや遺産分割協議が長引いてくると、被相続人(亡くなった人)名義で固定資産税の納付書が届くことがあります。
固定資産税は毎年1月1日時点の土地登記簿、建物登記簿、固定資産補充課税台帳に登記、登録されている所有者に課税されるものです。
そして、固定資産税は年税のため、1月1日時点で不動産の名義人が変わっていなければ、遺産分割協議中であっても故人名義で納付書が届くことになるのです。
遺産分割協議中の固定資産税は誰が支払う?
固定資産税は、本来は登記名義人が負担するべきものですが、すでに被相続人は亡くなってしまっていますので、当然支払うことができません。
また、遺産分割協議中は、まだ誰がこの不動産を相続するのかが決まっていませんので、相続人の誰が負担するのかも決められません。
相続人の誰かが、とりあえず立て替え払いするということも考えられますが、遺産分割協議が長引いているような場合には、相続人間で不動産の相続についての合意が得られていないことが多く、これが余計なトラブルを引き起こすこともあります。
法律の理屈上では共有財産
ちなみに、一応法律の理屈上は、被相続人が亡くなると、その瞬間に権利が相続人に移ることになっています。
ですから、いったんは不動産などの被相続人の財産は相続人の共有財産になります。
この理屈からすると、固定資産税も相続人がそれぞれ法定相続分に従って平等に負担する、ということになってきます。
不動産の固定資産税は原則遺産の中から支出する
ただし、相続人が複数いて、遺産に不動産があるというような場合には、これをきっかり平等に負担するというのは現実的に難しいことがほとんどです。
では、固定資産税はどのような扱いになるのかというと、遺産分割協議中に生じた固定資産税については、不動産の維持管理費となり、原則として遺産の中から支出する、つまり控除するということになります。
そして、固定資産税と同様に、不動産を維持管理するための経費、例えば地代や賃料、火災保険料などについても、原則として遺産から支出します。
民法第885条(相続財産に関する費用)
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
2 前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。
相続税は維持管理費用に該当しません
なお、相続税については相続した財産に対して課せられる税金であり、遺産を相続した相続人自身が申告して納税するものです。
ですから、相続税はこの場合の維持管理費用にはあたりません。